いろいろな評価の意義

学習目標において培う能力が何であるかを明確にし,それが達成できているかどうかを評価する
 授業設計において目標を明確に示しながらも,実際の評価においては,それはさておき評価しやすいことを評価するといったことが見られます。これは,後述するように評価しにくい能力もあることが原因の一つです。評価しにくいから評価しやすいものだけを評価するでは,何のための評価なのかわからなくなってしまいます。
 課題設定においては,この課題を解決することによってどのようなことができるようになればよいのか,達成目標を示すようにします。そのことにより,学習者も学習のめあてをはっきりもつことができます。また,授業終盤のふり返りもその達成目標に到達できたかどうかを自己評価(ふり返り)することができます。教員においても授業のねらいを明確にするとともに,授業の目標をはっきりと自覚することができます。そして,その達成目標に到達するために授業における学習手順などを示して授業を行うようにするとよいといえます。
 >>>>課題設定については,ここのサイトを参照
 >>>>自己評価については,次の研究を参照
評価においては文字による表現だけではなく,描画や図式,操作(行動)などいろいろな表現も評価の対象にする
 教師にとっては評価ですが,学習者にとっては表現活動の場です。能力の育成を考えた場合,いろいろな評価法を用いて学習者にいろいろな表現活動を行うことが,いろいろな能力の育成につながっていきます。また,いろいろな表現活動によっていろいろな側面の能力を評価することは,真正の評価に近づくといえます。
 AIの開発が現代において躍進してきたのは,機械学習のディープラーニングによるところが大きいといえます。ディープラーニングにおいては,情報の特徴量検出を行っています。そこでは,ある意味ではイメージのようなものを形成し処理できるようになったため,人間に近いような処理ができるようになったといえます。見方を変えれば,人間らしい能力を育成するためには,言語だけでなくイメージを表現する方法などを用いて,それに関する能力を育成することが必要であり,それを評価することが大切であるといえます。
 >>>>「脳科学と理科教育」のサイトを参照
評価しにくいものは,事例によって自身が評価できるようにする
 言語化されたものでも長文のものや言語化されていないイメージなどは,客観的な評価が難しものもあります。そのため,その評価法を用いない,あるいは用いても学習者にフィードバックしないといった問題が生じます。評価しにくいので表現させないというのでは,その能力が育成できないといった問題が生じます。また真正の評価ができないことになります。
 描画などの評価が難しい評価については,評価基準に対応した具体的な事例を示すことにより,学習者自らが評価することが考えられます。このことによって,学習者自身がフィードバックをかけて,自分自身の改善を図ることができます。主観が入ってしまう場合は,他の学習者との交流において,なぜ自分は事例をもとにこのように評価したかを説明し,議論することによって客観性を高めるようにします。また,その議論そのものが,学習者のフィードバックをより促進させるといえます。自分の表現したものを確認し合って改善していくといったことが重要といえます。
 >>>> 自由記述評価システム   >>>> 描画の評価システム
学習者自身が評価したものを教師が授業で用いることが,指導と評価の一体化につながる
 評価結果をもとに授業改善を行っていくPDCAサイクルに,評価を位置づけることは大切です。しかし,評価と指導の間に間(ま)があるといたサイクルではなく,学習者が表現したもの(教師においては評価の対象になるもの)を,その場において授業の中で生かし改善していくようにすることが,指導と評価の一体化であると思います。したがって,授業展開の中で用いられるような表現活動(評価)を行うように,目標と評価のつながりの中で位置づけながら授業活動を行うことが必要です。
 学習者が表現したものを,選択したり意味づけしたりする中で,次の学習展開につなげていくことは,自動的に評価を学習活動に組み込んでいることになります。学習活動の中に評価を組み込むことが,本当の指導と評価の一体化と思います。