分析

語句関連分析(MSOM)
 語句関連システムにおいては,単語の頻度および単語間の距離による関連を表示します。頻度の高い単語の関連,キーワードになる単語の関連などをみて,記述内容や発話内容の特徴を見ていきます。これまでの研究においては,次のようなことを分析しています。
 ・理科のワークシートにおける予想や考察の記述内容。
 ・教科書の内容
 ・授業中の教師の発話
 ・授業整理会における参観者のコメント
 ・理科の自由記述問題に対する回答
 ・単元の評価規準
 これらの分析の中には,比較する対象の自己組織化マップをそれぞれ作成し,比較分析することも行っています。
 ・出版社の違いによる教科書内容の比較
 ・同じ授業内容で教師の違いによる発話の比較
 ・正答と誤答の回答の比較


自由記述評価(MsomLab)
 本システムでは,自由記述の問題に対する回答を自動評価するものです。どのようにして評価するかとというと,予め自由記述について評価された回答例を自己組織化マップに配置しておきます。そして,新たに自由記述で回答したものをその自己組織化マップに位置付けます。予め評価され配置されたところに位置付けられますから,位置付けられたところの評価と回答例を見ることにより,新たに回答したものの評価が推定されます。この方法においては,予めたくさんの回答例と評価が必要になります。たくさんあれば,新たに回答されるものと類似したものがある確率が高まるといえます。
 具体的には,自己組織化マップでは,回答が正誤によって色分けされ配置されています。そして,新たに回答されたものが自己組織化マップのどこに位置するかマークされます。セルの色とともに,その回答例から新たなの正誤について判断することができます。新たな回答が結果的に正答と判断されても,近くからよりよい回答を得られる場合があります。また,誤答からもなぜ誤答かを考えことにより,正しい回答についての考えを深めることができます。
 このシステムを開発して利用してもらうと,学習者は自分の回答が正答と判断されても,近くの誤答例から,正答の妥当性や根拠を探ることが多いということです。このことから,グループやクラスの中での話し合いにおいて,誤答も含んだいろいろな考えがあることが勉強になることを改めて実感させられました。友達のどのような考えでも真剣に聞くことが,自分の勉強になることがいえると思います。

交流システム(CS_MSOM)
 1クラスの子どもがweb上で自分の名前と回答(記述)を書き込むことにより,自己組織化マップのセルに,全員の名前が表示されます。名前が表示されたセルをクリックすると,その記述内容が右枠に表示されます。記述内容が似ているほど,近くまたは同じセルに名前が表示されます。自分の表現と類似した回答を参照して,考えを確認したり,より適切な表現を見出したりできると考えられます。また,自分から遠くに位置した考えを参照することにより,幅広い考えを得ることができると考えられます。
 教師においては,一人一人の子どもの考えを確認できます。いろいろな考えを実際に発表させたいときは,マップの特定の位置からだけではなく分散させるように指名します。同じような考えの子どもをグループにしたいときは,マップの近くに位置している子どもをグループにします。
 web上に回答したものをデスクトップで確認したいときは,デスクトップ版の「CS_MSDT」を用います。また,予め記述された内容を自己組織化マップに配置したいときなども,このデスクトップ版を用います。

連想モデル(MAMM)
 理科の単元において,直観的に思いつく学習目標や内容を自由に記述することより,関連する内容が単語で表示されるシステムです。その関連する内容を参考にすることにより,学習において必要とする内容や予め学習しておく内容,次に続く内容などを確認でき,授業設計に役立てることができます。
 まず,学年の単元をプルダウンにより選択し,学習目標や内容に関わることを中央の枠に入力します。決定をクリックすると,左下の枠に記入した内容の単語が表示され,右枠にそれに関連する内容の単語が想起されます。この想起された内容が関連して学習したらよい内容と考えられます。この想起のためのベースとなるデータは,単元に関する評価規準を用いています。
 このような連想モデルは,子どもの記述内容からも作成できます。理科の問題に対する回答やワークシートなどへの記述内容を用いることができます。これらをもとにモデルを作成するとにより,想起内容をシミュレーションし,子どもの知識構造を解明していくことが考えられます。これまでは,中学校の大気圧に関する問題の解答から,連想モデルを作成し分析を行っています。
テキストマイニング(TM_MSOM)
 1000までの文章を自己組織化マップによって配置することができます。自己組織化マップの大きさは,文書数によって変化します。記述内容が類似していれば,お互いが近くのセルに配置されます。同じセルに,複数の文章が入る場合があり,その文書の数によってセルの色が変わります。色のついたセルをクリックすると,記述内容が右枠に表示されます。記述内容が類似していれば近くのセルに配置されるので,たとえば自己組織化マップを任意の大きさのメッシュ状に分けて,そのなかから一つの文章を抽出していけば,偏りなく全体のおおよその内容を,その抽出した文章で代表することができます。また,セルの色から内容について頻度の高いものも示されるようになっていますので,それらも考慮しながら文章を抽出します。セルをクリックして,表示された文章を見て,それを抽出したいようであれば,「テキスト保存」のボタンを一度クリックします。メッシュ状などにセルをクリックしていき,必要であれば「テキスト保存」ボタンをクリックするというように,これを繰り返します。以上のことを一通り終えて,「抽出テキストの表示」をクリックすると,先ほど抽出した文章がメモ帳に表示されます。この内容が,記述された内容をいくつかに代表させて,集約した内容と見なすことができます。このように一般的なティストマイニングの方法と異なり,ある文章を代表としながら全体の内容を集約するという方法です。自由記述のアンケート内容や理科問題の解答の分析に利用できるといえます。
 異なる教科書の内容を比較したい場合など,文章が予めカテゴリー分けできるものを比較する場合は,「TM_MSOMCA」を用います。「TM_MSOMCA」では,両方の文章を一緒にして自己組織化マップに表示しますが,カテゴリーAの文章のセルの色,カテゴリーBの文章のセルの色,両方が一緒になったセルの色といったように,セルの色を変えて表示します。色がランダムに分散したり,両方が一緒になったセルの色が多い自己組織化マップが生成された場合は,両カテゴリーの文章とも極端な違いはないと思われます。一方,自己組織化マップの特定の位置に,どちらかのカテゴリーの色が偏っている場合は,その部分に違いが生じていることがわかります。カテゴリーは,5つまで設定が可能です。
まだ行っていませんが,たとえば次のような分析が考えられます。
 ・教科書の内容の比較:出版社の違いによる比較,同一出版社の時代による比較。
 ・授業中の教師の発話の比較:同一教師における授業の前半と後半の比較。異なる教師の同一授  業内容における比較
 ・問題に対する回答の比較:正答と誤答の記述内容の比較