高機能広汎性発達障害児における間接発話理解の検討と課題 田口愛子(金沢大学人間社会環境研究科) 大井学(大阪大学大学院・大阪大学・金沢大学・浜松医科大学連合小児発達学研究科)
【はじめに】高機能広汎性発達障害(HFPDD)のコミュニケーション障害は様々な研究が行われているが、HFPDDに対する間接発話理解の研究は殆どない。本研究では定型発達児(TD)との比較等を通し、HFPDDの間接発話理解について検討したので、結果を報告する。
【方法】@HFPDD児20名、TD児20名に4コマ漫画を用いた間接発話課題を実施し、1)対象群の比較、2)間接要求、間接非難、皮肉の比較、3)心の理論課題と間接発話課題の関連を検討。AHFPDD児17名、TD児15名に、間接発話課題をビデオ条件、文章条件、4コマ漫画条件、実際の対面伝達場面(実践条件)の4条件を設定し、伝達文脈が間接発話理解に影響するかを検討。
【結果】@HFPDD児は話し手の意図を尋ねられたときにTD児よりも間接発話理解が乏しいが、話し手の字義的、非字義的解釈を「選択する」ことは両群間に差はなし。理解が困難であると考えられた皮肉は、両群とも間接要求より理解が良好で、2次水準の心の理論課題を通過していない者でも皮肉理解が可能であった。A4コマ漫画条件、ビデオ条件、文章条件の違いは間接発話理解に影響を及ぼさなかったが、実践条件ではHFPDD児とTD児で間接要求理解に差がみられた。
【考察】@HFPDD児は間接発話の全てが理解できないのではなく、皮肉も理解可能であることが示唆された。しかし、「4コマ漫画」という課題条件を考慮する必要があった。A4コマ漫画条件、ビデオ条件、文章条件では理解に差はなく、間接発話理解は伝達文脈による違いはないかもしれないが、本研究の課題は対象児にとって問われている内容を簡単に把握できたために理解が容易であった可能性も否定できない。
【結論】先行研究と同等の条件の下、文脈情報の多少が間接発話理解に影響するか検討が必要。