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平成18年度
資質の高い教員養成推進プログラム(教員養成GP)

1 教育プロジェクト名称

 WEB教育実習ノートによる自主学習の支援

-‘なるため実習ノート’を活用した高等学校教員養成における

訪問対話型教育実習指導・評価システムの構築-

2 教育プロジェクトの概要

 金沢大学における高等学校教員志望者が附属高校で履修する「教育実習」の学習支援に、事前・事後指導、授業準備・実践・評価、成績評定等を網羅したWEBノー ト(‘なるため実習ノート’)を使用する。学生は‘ノート’のフォーマットに沿って、実習に関わる全ての学習活動を記載し、ポートフォリオを創造してい く。大学及び附属高校教員は、‘ノート’の仕掛けで、学生の自主学習を強力に支援し、実践力を有する教員養成の実現を図る。

3 教育プロジェクトの内容等

 

(1)教育プロジェクトの内容及び実施計画について

“定番”「実習リングファイル」がさらに進化する!(先行取組)

金沢大学教育学部では、教育実習の質的向上を目的に平成14年度よりユニークな対話型評価を導入した教育実習の指導・評価システムを運用している(表1)。

 

表1 「実習リングファイル」による訪問対話型指導・評価システム

特長

1

学部教育実習指導担当教員制度

実習生ひとり一人を学部教員全員が分担し、責任をもって実習指導・評価を行う。

2

訪問指導

学部教育実習指導担当教員が教育実習期間中に1回以上、実習校を訪問し実習状況を確認しアドバイスする。

3

対話型実習評価

実習生・実習校指導教員・学部教育実習指導担当教員の三者面談により、実習生の実習成績を評価・評定する(附属学校園実習)。

運営組織

金沢大学教育学部教育実習運営委員会

内部評価

各種アンケート調査を実施、平成17年度教育(養護)実習連携推進協議会を開催。成果と課題を報告書に掲載。高い評価を得る。

外部評価

金沢大学教育学部教育実習運営協議会(実習校代表者・石川県教育委員会・金沢市教育委員会)を開催。高い評価を得る。

 

教科内容をもっと深めたい (三つの課題)

 システムが稼働して3年が経過した現在、次の三つの課題が明確になった。

課題①:実習関連情報の連絡システム・共有システムの開発・運用

 本学キャンパスと附属学校園とのアクセスに不便なこともあ り、実習生、実習校指導教員、そして学部指導教員との実習関連情報の日常的な連絡システム・共有システムの確立には至っていない。そのため、学部指導教員 による訪問指導や三者面談による実習評価・評定の質的向上を図る上で大きな支障となっている。

課題②:教科内容に関する自主学習の支援

 特に、高等学校実習において、実習生の教科内容に関する指導 力不足が目立つ。担当する単元について、十分な学習時間を提供し、自主学習を支援するシステムの工夫が必要である。現在、本学部では、2年後の全学的な学 部再編(課題③を参照)を機に、教師になるための自主学習支援システムを構想し、その核となるアイテムとして、入学から卒業まで使用する“教師になるため のノート”(通称‘なるためノート’)を導入予定である。本プロジェクトは、教育実習に関わる部分について、その「ノート」を先取りして実践するものであ る。

課題③:金沢大学における教育実習システムの統一・標準化とその運営

 金沢大学教育学部附属高等学校での教育実習においては、教育学部独自の教育実習システムと他学部独自のものとが並行して運営されているが、一定の教育効果を保証するためには、より高いレベルでの教育実習システムの統一・標準化が必要である。

 本学は平成20年度より現在の8学部を3学域(人間社会学域、理工学域、医薬保健学域)に再編することを決定しており、その中で本学部(再編後は人間社会学域の「学校教育学類」)は大学全体の教員養成の中核を担い主導する立場となる。


‘なるため実習ノート’で教師を目指そう!(課題克服のための核アイテム)

 課題②で述べた‘なるためノート’の教育実習版、‘なるため実習ノート’は、上記三つの課題に対応すべく、現行の‘教育実習リングファイル’をWEB版 として全面的にリニューアルするものでる。このノートは、学生が自身の電子ポートフォリオを構築することを念頭に構成されており、事前・事後指導や成績評 価までの過程を組み込んでいる。大学の指導教員、附属高等学校の指導教員の積極的な連携と支援のもと、‘なるため実習ノート’の要求するメニューに沿いな がらページアップしていく過程で、学生は自ら主体的に学習・実習を推し進めていくことになる。(図1

 

図1 ‘なるため実習ノート’による教育実習支援

図1 ‘なるため実習ノート’による教育実習支援

 

図2 ‘なるため実習ノート’のサイト構成

図2 ‘なるため実習ノート’のサイト構成
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図3 ‘なるため実習ノート’のWEBイメージと「学習ノート」の概略

図3 ‘なるため実習ノート’のWEBイメージと「学習ノート」の概略

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“なるため”に、毎日ページアップする(‘なるため実習ノート’の構成・内容)

 ‘なるため実習ノート’の構成や主なフォルダーの内容は以下の通りである(図2)。

『実習生個人サイト』

  • 「学習ノート」は、大学あるいは附属高校指導教員が提示した課題に、WEB上で解答する「課題レポート」(事前指導、事後指導期間の自主学習支援)、指導案作成に至るまでの学習記録(教具・教材の狙い、予備調査・実験記録、発問や授業展開法、参観した授業から学んだこと、生徒の観察記録等)を自由な書式で記述・編集する「教材研究」「授業研究」「生徒理解」(実習中の自主学習支援)からなる。(図3
  • 「実習日誌」及び「学習指導案」には、授業参観者(指導教員を含む附属高校教員、大学指導教員、他の実習生)の評価コメントページが含まれる。
  • 「自己評価票」は、授業準備・実践、事前・事後指導期間の全ての場面の‘評価に関する書式’を有し、三者面談による実習評価・評定の参考資料となる。

『連携・連絡サイト』

  実習生と指導教員グループ間での各種連絡調整のためのページからなる。

『お宝サイト』

 過去の実習生の指導案や教具の資料を集めた「教材研究羅針盤」や指導教員グループからの教具の例示や発問事例のアドバイスを収録した「プロの学習指導案ワンポイントアドバイス」等からなる。

『アンケートサイト』

 実習運営母体(後述)が行うアンケートで、実習全般にわたるページに加え、本プロジェクトの評価に関するページも含む。実習生が独自に作成する生徒への授業アンケートは、その集計・まとめを含めて、「学習ノート」「授業研究」で管理される。

先生がたが全面的にサポートしてくれる(実施・指導体制と運営組織)

 附属高校で教育実習を行う対象となる学生は、教育学部(主 に、理科、地歴、公民、数学、家庭、体育)、文学部(国語、地歴、公民、英語)、法学部(地歴、公民)、経済学部(地歴、公民)、理学部(数学、理科、情 報)の4年生である。従って、運用面では、それぞれの実習生の大学指導教員及び関連教科を担当する附属高校の教員がプロジェクトに加わる。具体的な運営組 織と任務は以下の通りである。

●「‘なるため実習ノート’運営委員会」

任務:

 実習生へのガイダンスおよび指導助言、本プロジェクトの総括運営・評価

構成:

 実習生を担当する大学教員・附属高校教員、教育実践総合センター教員

●「遠隔授業システム委員会」

任務:

 デジタルデータ化、データ送受信・Webサイト構築などの技術的支援
(‘なるため実習ノート’のソフト開発は外注とするが、本委員会がそのフォーマットの策定を行い、運用におけるソフト面のメンテナンス、セキュリティーにも携わる)

構成:

 委員会メンバー、教育実践総合センター教員、システム支援学生グループ

事前指導から集中の連続 (実施年次計画と経費との関連)

 附属高校での教育実習は9月に4週間行われる。18年度の実習では、教育学部の学生を対象に、実習リングファイルを簡易デジタル化したWEBノートで対応する。この経験と成果にもとづき、19年度から‘なるため実習ノート’を本格的に運用する。

 プロジェクト期間中のスケジュールは次の通りである。

プロジェクト期間中のスケジュール
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(2)教育プロジェクトの特色について

完全対話型の実習指導が実現する(先進的な取組)

 課題①及び②に対応した取組の主たる特色・効果を要約すると、以下の通りとなる。

◆学習記録や授業実践記録をWebサイトに集積することにより、実習生・附属高校指導教

 員・学部指導教員の実習記録・実習関連情報の共有化が促進される。

◆教員は学生の学習・実習の進捗状況を随時確認でき、教育効果の把握及び適切な指導が

 行える。これにより、評価の場面だけでなく、実習の全ての場面においてきめ細やかな

 対話型実習指導が可能となる。

◆実習記録をデジタルポートフォリオ化することにより、学生の自主学習、自己分析、自

 己改善が促進される。

 図4は、‘なるため実習ノート’に三者間で構築されたデータを、それぞれの立場で有効利用する場面を想定したものである。

 

図4 なるため実習ノートの活用イメージ
図4 なるため実習ノートの活用イメージ


アーカイブスではなく、ポートフォリオである!(創意工夫ある取組手段)

 教育実習にポートフォリオを導入した試みは現在では特に目新 しいものではないが、その取組のほとんどが、授業実践記録や指導案等を大学が編集・管理した、いわゆるアーカイブスである。ポートフォリオの本質は、“点 在する学習成果・情報を一元化して次の価値ある知・情報を獲得し、このサイクルを繰返すことによって自己成長を図ること”にある。しかしながら、本学を含 めて、今までの取組みは、「一元化」の先がカリキュラムを提供する大学等の機関側にあって、作成者個人(学生)にではなかった。

‘なるため実習ノート’は、パーソナルポートフォリオであり、自身で作成・編集しながら学習暦を管理し、そこから新たな‘知’を生み出して自己成長を促 す、自主学習の理想的なトレーニングアイテムである。いくつかのページにはポートフォリオを直感的にでも理解してもらえるよう、‘目に見える成長記録’を 記載するガイドライン項目(例えば、時系列での授業の自己評価ポイントの推移をグラフで表す等)を配する。


附属高校のパワー全開!(学校現場を重視した取組)

 実習生には春休み期間中に、授業担当する分野・単元を予告 し、分野全体にわたる教科内容について、自主学習するための十分な準備期間を設ける。これも事前指導のメニューの一つであり、‘なるため実習ノート’「学 習ノート」フォルダーの管理下となる。主に附属高校教員が定期的にノートを閲覧し、その間の学習についてコメント・指導にあたる。

‘なるため実習ノート’システムは附属高校のサーバーに設置 し、システムが軌道に乗った後は、附属高校がイニシアチブをとって管理・運営にあたり、システムのバージョンアップを行う。すなわち、附属高校の大学向け のオリジナルカリキュラムとして位置づけ、将来は附属高校で教育実習を行う他大学の学生にもこのシステムを適用する。(3

教育プロジェクトの有効性について                    

(3)教育プロジェクトの有効性について

統一規格で全学的取組みが加速(成果の継続性と発展性、課題③に対応した取組の有効性)

 教育学部が教育実習カリキュラムを他部局にも提供して、統一 規格による実習の運営・評価を行う。これによって、大学教員側の学生指導マニュアル(定期的な参観指導や「対話型評価システム」への参画等)も標準化され ることになり、全学的な見地からの教員養成の取組みが加速される。

 今回のプロジェクトは、金沢大学教員養成WGが主導する全学的取り組みで戦後の教員養成の歴史において未解決の課題であった、総合大学における高等学校教員養成において教育学部が果たすべき役割と責任の再定義の試みでもある。

 

県教委は教科内容に強く、学級経営にも明るい即戦力を求めている(採用側の意向を反映)

 教育学部以外の一般学部のカリキュラムでは教職科目が不十分 である。そのため、実習中の限られた現場経験の中で、学級経営についての最大限の学習効果が求められる。‘なるため実習ノート’は教科内容についての学習 を強化すると同時に、学級経営の面でも、全学の学生に対して一律に、高い水準でのカリキュラムを保証することになる。

 

教師を目指すための教育実習である(中教審中間報告、『教科等の指導力に関する事項』に沿った取組)

‘なるため実習ノート’では、書き込み用のガイドラインフォーマットを提供するページだけでも35ページを超える見込みである。本プロジェクトの継続により、“資格取得のための実習ではなく、教師になるための実習である”、ことが定着してゆく。当然のことながら、この取組は附属小学校・中学校での教育実習にも順次展開してゆく。


金沢大学スタンダードを発信する(他大学への波及効果)

 本プロジェクトは、訪問指導に制限がある遠隔地での実習(学 生の故郷での出身校実習等)において有力な指導・評価手法となる。‘なるため実習ノート’を介して高校指導教員とも綿密に連絡を取り合うことができ、大学 側がカリキュラム遂行に深く関わることによって、責任をもって単位の評定が行えるようになる。


ポートフォリオ構築の経験が生きる(学生の資質向上に関わる副次的効果)

  • ‘なるため実習ノート’は、学生にとっては教科内容や学校現場について深く学ぶ絶好の動機付けとなる。さらに、ノート作りを通じて自己表現力の向上や、昨今の学生が苦手としている“報告書のまとめ方”の鍛錬にもなる。
  • ポートフォリオは児童・生徒の評価の一手法として、あるいは教員自身の自己成長のために、学校現場で実践する試みが増えている。‘なるため実習ノート’で培った経験が教育現場で応用できる。

プロジェクトに対する評価は、自己評価(指導する側である大学教員と附属高校教員による評価と実習生による評価)と外部評価からなる。主たる評価の観点と評価体制を図5に示した。

 

図5 プロジェクトの評価の観点と評価体制

図5 プロジェクトの評価の観点と評価体制

  • 実習生による評価は、‘なるため実習ノート’の「アンケートサイト」を利用し、教育実習後に行われてきた大学教員、実習生、実習未経験学生(下学年生)の交流会である「教育実習を振り返る会」を、三者による相互評価の場としても位置づける。
  • 全学で取り組むこのプロジェクトを、教育学部教員の特別査察チーム(「教育実習システム評価委員会」)が評価し、学内の公開研究会を通じて公表する(準外部評価)。
  • 「なるためノート運営委員会」が評価及び改善策の取りまとめを行い、金沢大学・石川県教育委員会連携協議会に外部評価を委託する。さらに、外部評価の一環として、学外の学校教育関係者、研究者を招聘してフォーラムを開催し、プロジェクトを総合的に評価・総括する